立川志ら玉の現場主義日記

-志ら玉ブログ- 落語家・立川志ら玉の何も事件が起こらない日々

「酒場の藝人たち」

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文春文庫、矢野誠一著。読了。
 
文庫化以前、青蛙房刊行時の題は「圓生とパンダが死んだ日」。
十年以上前図書館で借りて読んだことあるはずだがほとんど忘れていた。
 
浅香光代劇団の旅廻りに一緒についてまわった「浅香光代西海道御難旅路」。
柳朝追悼エッセー「さらば柳朝」。
この二本が特によい。
 
今まであまり注目されてこなかった演芸と新劇の係わりについてのエッセーいくつかあり。
演芸と新劇の影響を考察。興味深く読む。
 
今のような落語本出版ブームとは程遠い一昔前。
私が高校生の頃、落語関連本は一般書店にほとんど置いていなかった。
その中で矢野誠一氏の落語本は数冊文庫化されており値段的にも手に入れやすかった。
図書館にもよく置かれていてほとんど読んだ。
 
矢野誠一とは、いわば私の「活字落語」原体験のような存在。
そこから色川武大安藤鶴夫永六輔小沢昭一正岡容…etc.の演芸本読書に今つながっている。
 
大学時代、水戸芸術館で行われた小三治独演会。
市主催の芸術鑑賞という扱いからか、構成が通常の落語会と異なり開演前にまず解説がつく。
そこに矢野さんが呼ばれていた。
動いている矢野誠一が見られて嬉しかった記憶がある。
 
ここ数年の落語ブームで雨後の筍のように増えたニワカ演芸評論家。
評論家と自称しながら、独自の解釈・発見など何も無く落語ファンの動向をただ後追いしているだけの者もいる有様だ。
そのなかで、ある意味昭和から平成の橋渡しをした矢野誠一氏再評価の動きがあってもいいと思うのだが。