立川志ら玉の現場主義日記

-志ら玉ブログ- 落語家・立川志ら玉の何も事件が起こらない日々

5月13日(木)の志ら玉


雨。

9時起床。

 

半蔵門

国立劇場、「前進座創立九十周年記念五月国立劇場公演」。

緊急事態宣言延長の影響で、今日が初日となる。

午前の部、11時開演。

 

「操り三番叟」。

三番叟、嵐芳三郎

人形遣い、渡会元之。

千歳、平澤愛。

翁、山崎辰三郎

他の舞踊公演等同様女性出ることには何の拘りはないが、女方の出番少ない前進座のこと、若手女方使って舞踊劇の経験積ませるのも、と老婆心ながら思う。

 

「たが屋の金太」。

前進座が最近よく扱う落語ネタを材とした新作「長屋もの」。

だが当作は、以前の山田洋次演出「裏長屋騒動記」では感じなかった「落語」喜劇の世界観そのものに先ず違和感。

観客のレベルを低く想定したとも感じてしまうぬるいほのぼの世界に、芝居自体のリアリティーを感じず。

「落語」というものの概念を、子供でもわかる安心安全な笑い、とでも捉えているかのような(ひいては「喜劇」も、に通ず)。

少なくとも私が心酔した談志家元の教えではない感覚。(まぁ、落語を生業としながら、そのように規定していると思しき手合い居るのが、情けないところであるが…)

その中にあり、武士役を至極クールに鋭く演じていた矢之輔丈だけがリアルな人間に見えた。

深見千三郎の教えではないが、喜劇こそ真面目にリアルに演じるべき種の芝居、なのでは。

その点山田洋次は、きちんと「世話物」として演出していた。

「敵討ち」に対する独自解釈を芝居内に折り込んでいた様に、そういう高度な視点で落語世界を演出して欲しかった。

13時20分終演。

 

居酒屋ランチで、チキン南蛮定食。

 

同、午後の部、14時半開演。

 

「茶壺」。

熊鷹太郎、中嶋宏太郎。

麻估六、嵐芳三郎

目代、早瀬栄之丞。

昼食でお腹ふくれた為か、後半眠気でうとうと。

 

俊寛」。

俊寛僧都藤川矢之輔。結構。

断崖の上から海原に向かって手を伸ばすお馴染みの幕切れ。

そこで、そよ風が吹き、俊寛のほつれ毛が微かに揺れる。

恐らく岩山の大道具先端内側に送風機仕込んでいるのだと思うが、その新演出に驚く。

激しい感情の揺れの後のそよ風という、自然の穏やかさとの対比がお見事。

これからも孤島で生きていく、生きていかざるを得ない俊寛の「未来」に対する想像をかきたてる。

役に入り込んだ矢之輔丈、その役者の演技をよりプラスに導く斬新且つ効果的な演出に感動。

前進座、恐るべし。

また、売りの一つであるアンサンブルもこれまた結構。

16時40分終演。

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夕飯、カレー。

缶ビール一本飲んだら眠くなり、21時就寝。

二、三度目覚めたが、そのまま朝まで。